グリーンカーボンとブルーカーボン
2022/10/25 | お知らせ
国が2050年までにCO2(二酸化炭素)排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの中で、企業や自治体に脱炭素化への対応を求めている。その対応策としては 「陸上の植物が大気中のCO2を吸収して光合成反応により隔離・貯留される炭素」グリーンカーボンへの取組が主流である。
しかし、数年ほど前から「海の生物の作用により貯えられる炭素」ブルーカーボンが注目されてきている。
ブルーカーボンとは、「藻場・浅場等の海洋生態系に取り込まれた炭素」のことで、対象となる生態系は海草藻場、海藻藻場、湿地・干潟、マングローブ林が挙げられる。
グリーンカーボンとブルーカーボンはいろいろな項目について比較されるが、人類の活動によるCO2を森林が12.5%を吸収しているのに対して、海では30.5%を吸収しており、残りの57%は大気中に放出すると言われている。したがって、ブル—カーボンの方がCO2の吸収源としては優れているが、研究や活用の取組み面では遅れている。 森林のCO2吸収量は頭打ちになることが予想される中で、大きな吸収ポテンシャルを持つブルーカーボンが今後の吸収源対策として注目されていく。特に、海洋国家である日本はポテンシャルが大きいため、国として2050年カーボンニュートラルを目指す上で無視できないものになっていくことが想定できる。
現時点ではブルーカーボンの実用化において大きな課題が2つある。
まず1つ目が藻場の造成技術を高めることで、現在は地球温暖化により海水温度が上昇し、各地で海そう類が減少・消失してしまう磯焼け及びウニや小型巻貝、アイゴ、チヌなどの藻食生物による食害が問題となっている。ブルーカーボンを活用するにも、海そう類が育たなければCO2を吸収することは出来ない。
そして2つ目がブルーカーボンによるCO2吸収量を精緻に算出することで、森林と異なってまだブルーカーボンは国際機関や国に正式に認められた吸収量の算定式がない状況にある。その理由は、海そう類にはいくつか種類があること、生育環境によってCO2吸収量が異なることが挙げられ、CO2吸収量のモニタリングにおいても、ブルーカーボンの定量的な測定は進んでおらず活用に向けた課題となっている。
今後は、こうした藻場の変化の実態を把握し、減少している藻場を回復させるため、環境変化に適応した新たな藻場造成技術の開発が必要となる。
その1つが、海草、海藻養殖のためのプラットフォームづくりである。
これには、大量のコンクリート構造物が必要となり、山から採った天然骨材によるコンクリートを使用すれば、グリーンカーボンを減らしてブルーカーボンを増やすという矛盾した結果になる。
そこでACRACは、海草、海藻養殖のための環境づくりにグリーンカーボンを減らすことがない「再生骨材コンクリートの活用」を提案している。
一般社団法人 再生骨材コンクリート普及連絡協議会
事務局長 出 頴五